写真業界はファッション重視へ

写真スタジオの変遷

写真スタジオの価値は大きく変わりました。以前のブログにも書きましたので、どんな感じで変遷してきたかはそちらをお読みください。
 

写真そのものの価値

今、写真に求められるもの、お客様が重要視しているものは「ファッション性」です。

  • 思い出を記録に残す
  • おめでたい日を楽しく過ごしてもらう
  • フォトグラファーのスキルを提供する

これだけでは、お客様に100%の満足を提供できません。不十分です。もうひとつの柱として「ファッション性」が必要な時代です。
 

なぜ変わってきたのか

写真が手軽になってしまいました。素人でも写真そのものは簡単に撮影できます。しかも、画像レタッチもアプリで簡単にできます。
 
写真を撮ることが手軽になれば、スマホメーカーやアプリ開発会社は、写真が撮れるだけでは競争に勝てないので、さまざまな機能を拡張させます。
 
そして、写真や動画を配信できるSNSも充実して個人が世界に作品を発表できる場が増えたり、友人と共有できるようになったりすると、さらに新しい「写真のアイディア」に対するニーズが高まります。
 
こうした流れの中で、写真と動画は劇的にレベルが上がりました。特にここ5年はすごかった。2014年のインスタグラム、2015年にリリースされた「SNOW」が良い例でしょう。この2つのアプリが日本でリリースされたのが、わずかここ4~5年であることに驚くほど、今では誰もが知るメジャーアプリです。
 
インスタグラムが作ったともいえる「映(ば)える」という言葉。この言葉は「ユーザーが写真が撮れるだけでは満足していません」というメッセージが込められています。
 
SNOWは、最初「盛り」からはじまり、機能が拡張されて、誰の写真だかも分からないようなものを撮影して共有しています。
 
インスタグラムやSNOWの繁栄が示していることは、写真に求められる重要性が「実態を正確にと撮れている」ではなく、「写真を見た人の心を動かしたい」になっていることではないでしょうか?
 
写真に対する価値は、完全に壊れました。写真は記録アイテムではありません。コミュニケーションツール、ファッションツールです。
 

コミュニケーションツールではなく「残るもの」

とはいえ、写真館に求められる写真が「SNOW」のような写真だということではありません。
コミュニケーションツールとしての写真は「一過性」で使う写真です。一生、大切に保管したい写真ではありません。
一方で写真館に求められる写真は一生モノです。
 

ファッションツールとしての要素は求められる

しかし、写真がファッションツールであることは、写真館にも求められるでしょう。なぜなら、結局撮った写真をシェアする環境があるので、友人と共有するであろうから、そこは「盛って」ほしいわけです。
 
なので、写真館で撮影する写真も「ファッションツール」として使えることが必要です。
 

ファッションとは

おしゃれとかファッションの私なりの定義は以前のブログで書きましたが、写真館の場合、
 
①少数派・先駆者タイプ
流行の衣裳や背景を使うなど、とにかくおしゃれを追いまくるパターンですね。現在であれば(すでに多少、陳腐化してはいますが)、白っぽいスタジオで、顔がちゃんと撮れているということより、雰囲気を撮ることを重視した、ストーリー性がある写真です。
 
②定点タイプ
美しいポージング、陰影のメリハリがあるライティングなど、昔ながらのプロの技術をきっちりちりばめた、王道の写真ですね。和装は最近、これに回帰しつつあります。特にウェディングや成人式など、大人の撮影はこちらのほうのニーズに備えないといけません。基本的には王道写真。でも小物やメイクに現代を散りばめる。そんな感じの写真です。
 
③非合理タイプ
ネガフィルムで撮影するフォトグラファーも、けっこう増えましたね。フィルム特有のファジーな感じが良いのかもしれません。
 
総合写真館に求められるファッション性は①と②でしょう。お客様のニーズが極端に少なく、かつコストも高い③は写真館向けではなく個人フォトグラファー向けでしょう。①は若い世代のフォトグラファーに開発してもらわないといけません(若くなくても感度の高い人はいますが)。②は熟練のフォトグラファーの腕の見せどころでしょう。
 

 

若いフォトグラファーへ

ファッション性が必要ならば、若いフォトグラファーの存在価値がぐっと高まっているとも言えます。
 
だから若手にはもっと自由に写真を撮ってもらいたいです。先輩のアドバイスを求めすぎないで欲しい。先輩も質問されたら答えるし、アドバイスもしてくれます。でも、それは自分の写真に自信がないから、責任を分散しようとしているだけではないだろうか。特に、モデル撮影などお客様相手でない写真は、自分の「素敵」を自由に表現しテストする、貴重な機会だ。そういうときに、先輩のアドバイスを聞きまくるようでは、だめだ。もっと自分に自信を持って欲しい。
 
もともとフォトグラファーの仕事に正解はありません。正解がない仕事というのは、批判されて当たり前の仕事です。数学みたいに「1+1=2」という正解があるものに、批判はありませんが、そうではないことは、人によって答えがいろいろあるので、批判があって当たり前です。
 
自分に自信がなく、不安いっぱいになって、自分の味を出さない。
 
これでは若者の若者たるメリットがぜんぜん活かされていない。年齢を経るにつれ、経験というテンプレートに答えを求めがちだったり、持ちたくもないプライドを持ってしまい、考え方の柔軟性が失われていくもんなんです。先輩もそれで悩んでいるのですよ。
 
だからファッション性が高い写真を撮ろう、と思っているような場合は、若いスタッフだけでテスト撮影・モデル撮影をやって、後から先輩や周囲の意見・批判を聞くようにしたいものだ。傷つくかもしれないしヘコむかもしれないけど、そのときこそ成長のチャンスです。予定調和でできた作品は、今までのラインを超えないと思います。
 
そのほうが先輩だってうれしいと思うけどな。頼もしい後輩がいるのですから。若い世代の想像力が、未来の会社の土台になっていることを忘れないで欲しい。