カメラマン・フォトグラファーになりたい未経験の方へ
最近、フォトグラファー・カメラマンに転職したいという希望者の方が増えた気がします。まったく異なるお仕事をされていた方が、写真の魅力に目覚めて、弊社に入社を希望してくれる。創寫舘で勤務すると、撮影の基礎的なことからプロフェッショナルなレベルまで幅広く教えてもらえると聞きつけた方で、将来的にフリーのカメラマンになる展望をお持ちの方は、特に創寫舘を名指しで入社してくれる。たいへん光栄です。
そこで、私なりに今のカメラマンに求められるものを時代の流れと共に書きます。
20世紀(1999年以前)~素人は手も足も出ない時代~
20年ほど前は、ほとんどの写真館は「中盤カメラ&フィルム」で撮影していました。
↑こういう操作が難しそうなカメラで
↑こんなフィルムをカメラに充填して撮影していました。
見ただけでも難しそうです。
フィルムカメラの難しいのは
- 露出やピントが合っているかどうかフィルム現像後にしか分からない。
- 目つぶりや半目もしかり。現像後に発覚することがある。
- 今よりもシビアに露出をあわせないと画像が出てこない。
- フィルムは数に限りがあるのでバシャバシャ撮影できないので一発必中で撮影しなければならない。
という点だと思います。これは確かに高度なプロの技です。
この時代は、写真館での撮影は「素人には手も足も出せない」レベルだったと言えます。
一方で、家庭用カメラもまだまだレベルが低かったうえ、中盤カメラも高額であったため、人生の節目に写真館を利用する「意味」があったのではないでしょうか。
21世紀初頭(2000~2007年ごろ)~異業種参入時代~
その後、写真業界もデジタル化して、中盤カメラにデジタル機器を装着して使用する時代になりました。
↑こんなフィルムをカメラに充填して撮影していました。
これによりフィルム時代のストレスはある程度改善されましたが、モニターのレベルが低いので、過信はできないレベルでした。
こうした機材の問題点は、その価格です。デジタルバックひとつでウン百万円する時代だったので、家庭用とはとうてい言えませんでした。ただ、この時代から徐々に貸し衣裳店などが撮影時業に参入するようになったと思います。人材育成に不安があっても、大金を使って機材を揃えさえすれば、なんとか撮影できるわけですから、デジタル化はボーダレスをすすめるひとつのきっかけになったと思います。
この時代までは、家庭用カメラのレベルが低く、高性能なプロ用機材はかなり高額であったため、まだ、写真館で撮影する意味は、撮影するだけでも十分ありました。
現在(2007年~現在)~アイデア勝負時代~
さあ、この時代になると劇的に色々変わってきます。まずはカメラですね。デジタル一眼レフカメラが劇的にレベルアップする一方、価格も落ち着いて来ました。素人さんでも高スペックのカメラが手に入るようにもなり、カメラの性能という点では素人もプロも差がなくなり始めました。
要するに「多少奮発すればプロと同じ機材は手に入る」「操作性も簡単になってきたので使える」「カメラも高性能になるのである程度のレベルなら誰でも撮影できてしまう」という、写真館にはなかなか厳しい時代がやってきたのです。
補足というか強調したいのですが、あくまで「ある程度のレベルなら誰でも撮影できてしまう」です。ある程度、です。見る人が見たら、目が肥えた人が見たら、未来の自分が見たら、プロと素人のレベル差に気づくかもしれません。ある程度というのは「それっぽい写真」が誰でも撮れるようになったということです。
この時代に登場したのがiPHONEですね。2007年6月に日本で初代iPHONEが発売されました。さらに、翌年2008年5月にfacebookの日本語版が開設。撮影すること自体が身近になり、撮影した写真の使い道として「保存」ではなく「発信」がメインになってきたこともあり、写真に対する人々のスタンスが変わりました。
私は「価値」というのは流通量の少なさ(希少性)や、めんどくささに比例すると思っています。「簡単」「誰でもできる」「発信することで誰でも目にする」ことになった写真や写真撮影の価値は、どうしても低く見られてしまう。
本当はそこに「技術」が隠れていて、素人とプロでは仕上がりが違っても、それを見極められる審美眼がなければ、乱暴に「でも、写真でしょ?」と強引にプロも素人も同じにくくられてしまい、価値が低く見られるのだ。仕方がないことです。
今のスマホのカメラはかなり高性能だし、アプリで盛った写真で成人式の写真はOKぐらいユーザーも現れ、「高い金払って写真館で写真を撮る」ことの意味合いが薄れてきているのは事実です。そして、写真館の存在価値は「撮影技術の難易度や機材」よりも「衣裳と着付けをしてもらうため」ということが相対的にあがってしまった。だからこそ、撮影センスで勝負する必要があるので、バック紙で撮影するだけでなくシチュエーションスタジオを設営するなど、付加価値となるアイディアが求められるようになったのです。
まとめ
長々書いてきましたが、職業に求められる要素は時代と共に変わります。
写真撮影に関して、現在では、求められる要素は「機材の知識」などではなく「センス」なので、フォトグラファーを目指すこと自体は、20年前に比べると「技術的・知識的ハードル」は低くなり、「センスの良さやホスピタリティのハードル」は高くなりました。ハードルの高さは総量として同じですが、ポートフォリオでみるとバランスが変わったような感じです。
ただ、基本は20年前と変わらない部分もあるので、ゆっくりと身に付けていきましょう。