後継者と家族経営
私に長男が誕生したときに「待望の跡継ぎですね!」とよく言われたものだ。
しかし!私は長男に事業を継承しようとはまったく思っていないし、私の家族全員、会社経営に関与させたくない。
理由は「経営者はしんどいから」ですね。単純です。親なら自分がしんどいと思うことを子供にさせたくないですよね。それに私は家では仕事の話はせず、妻も聞いてこない、私にとって理想的な家庭環境です。これを壊したくない。
私は創業者である父から事業を継承しましたしが、父から「会社を継げ」と言われたことはありませんでしたし、母はむしろ反対でしたね。私が「押しかけ継承」しただけです。ですから、そもそも森田家は事業継承体質の一家ではない。私が望んで、家族の反対を押し切って、勝手に継承しました。逆に迷惑だったかもしれない(笑)
私は大学を卒業してすぐには創寫舘に入社しませんでした。そんなことしたら「社長の子供はいいねぇ」と社員さんにも外部さんにも思われてしまい、会社の信用や社員さんのやる気を削ぐと思ったからです。私が入社することで、会社繁栄の足を引っ張りたくなかった。だからまずは、創寫舘とはまったく縁のない会社ばかりを中心に就職活動しました。
それに、「親の評価(欲目)」という偏った評価だけが私の存在価値の拠り所になってしまうのも嫌でしたから、就職活動という「他者からの客観評価」を森田哲朗というひとりの人間に下してもらう必要がありました。ですから、背伸びをして難関企業ばかりを受け、本当に運よくNHKに就職できて、良い経験もさせてもらいました。私は自分なりの事業継承の準備をしていたのかもしれません。
でも現実は、家族関係を無用に複雑化してしまうし、普通の家族の会話ができなくなったなぁという寂しさもあるので、一族継承・家族経営は、私の代で終わりにしたいと思っています。
それだけに、次期社長は現在の社員(未来も含む)さんになってもらいたいので、「社長になりたい!」と思えるような会社にしていかないといけない。そもそも一族継承・家族経営である理由は「リスクを他人に押し付けられない」ということに尽きる。優秀な社員も育つ中、会社の存続におけるリスクが小さくなれば、心おきなく「社長になってくれますか?」と打診もできるだろう。私自身は死ぬまで仕事を続けるつもりではあるが、人生は何があるか分からないので、次期社長へのバトンタッチの準備を、今から始めるのも早すぎることはないと思う。
今、私の目標は会社の繁栄ではあるが、それは手段であって、目的は社員の幸福獲得と、時期社長継承の土台作りです。