ブライダル業界の料理レベルは上がったのか?
<ブライダル業界を私的に考察する⑤>
先日、ブライダルの関係者の方が
「最近のブライダル業界の料理レベルは上がってきている」
と、割と確信めいておっしゃった。
比較として引き合いに出したのは「ずいぶん昔の結婚式」のお料理。
たしかに30年ぐらい前まではケータリングなど
冷めた料理やできあいの料理も少なくなかった。
宴会料理の延長線上に婚礼料理はあった。
確かにそれに比べれば上がった
・・・かもしれません。
でも私は「レベルが上がった」などと
楽観的に考えることはできません。
寧ろ「停滞しているなぁ・・・ここ10年」と
ひとりの業界人として焦っています。
料理もトレンドがあるので
それをいつも追いかけたり
時には新たなトレンドを創造したりしなければならない。
当たり前だ。
にもかかわらず婚礼業界は祝いの席ということもあり
定番の料理「いっぺんとう」で通用していた。
そういう時代が長かった。
現在ではトレンドを追うようになった、という点では
確かに進歩したかもしれない。
選択肢も増えた。
でも、そんなことは
一般の飲食店なら「あたりまえ」のことで
時代についていけるようになっただけで
「レベルが上がった」とするならば
すごくレベルが低い話しだし
エンドユーザーであるゲストや
飲食店を利用するお客様のことを甘く見てはいないかな?
2013年の「食材偽装問題」のときだって
日本中の名だたるホテルが
「カナダ産」→「北海道産」
「ブロイラーの鶏」→「地鶏」
「中国産」→「フランス産」
などといった偽装をしていた。
2008年のリーマンショック以降
長引くデフレの中で
サービス業の老舗・巨大組織まで手を染めた
最悪の事件です。
愛知県のホテル・結婚式場もかなりやっていた。
弊社はありませんでしたが。
むしろ真面目にやっていたので嬉しかった。
アイディアで価値を作れなかったから
食材頼りになって
でも料金が安いからブランド食材買えなくて
ついお客様をだましました。
そういう図式だ。
こういう悪いことをして
我々の業界に対するお客様の信頼は
おおきく失墜しました。
その反省から今に至るまで
色々な価値を作り出そうと
みんな努力していると思うし、
そう信じたい。
でも、それはあたり前の話で
それをもって「料金をもっともっと上げよう」など
ちょっとげせない。
不良が更正して普通の生活するようになったら
やたら誉められる、美談になる、みたいな。
それが当たり前なのにね。
とにかく比較するレベルが低い。
なのにお客様へ請求する料金が高騰しすぎている。
その昔、
名古屋には「インペリアルウイング八事迎賓館」という
それは豪華な結婚式場がありました
たしか2004年ごろに惜しまれつつ閉館。
本当にすばらしい結婚式場でした。
私は大学生のときに
インペリアルウイング八事迎賓館の結婚式に参列。
本当においしくて豪華なお料理。
もちろん予算も高かったでしょうが
レベルが高い式場でした。
自社や他社を見渡して
ウイングという伝説の結婚式場レベルに
匹敵する会場は、今なお、ない気がします。
そういうものが求められていない時代になった
だけかもしれませんが。
私が言いたいことは
時代によって実はレベルというのは上下左右していて
昔より今のほうが新しいとか
昔より今のほうがレベルが上がっているとか、
そういう単純なものではない。
時代によって質が下がってしまったものがあって
でも業界で何とか昔のレベルに戻そうと必死になっている。
そういう時期・分野もあるのだ。
たまたま下がった時期にこの業界に入り
今を見れば「レベル上がった!」と思うかもしれないが
本当に景気が良く贅沢な結婚式をしていたころは
比にならないぐらい贅沢な結婚式・料理が存在していた。
私が気になるのは
当時よりもまだ控え気味な料理内容なのに
料金が当時より割高に感じる・・・
デフレが長かった日本において
この20年の物価・所得上昇は大したことはない。
なのに結婚式の平均費用はここ数年で
異常に上がってきている。
レベルが上がった!
レベルが上がった!
と楽観的に料金上げすぎじゃない?という
結婚式場や写真館も多い。
年配者から見たら「どこが上がった?」と思われても
そういう時代を知らない世代が
今の業界を作っているので
一番ひどいレベルの時代から比較して
レベルを上げた分
料金を上げているように見える
つまり、
料理レベルが「この20年で」少し上がったからといって
そんなに自信過剰になってはいけないのです。
もっと「上」を経験している人は
時代の切り方しだいでたくさんいる。
ここまでは「過去と比較してもそんなに上がったわけではない」
ということを私なりに書きました。
しかし!
そもそも過去と比較して・・・というのが
ナンセンスだと思う。
お客様は「今の時代の今の価値」にお金を支払う。
以前との比較の「差分」に支払っているのではない。
結婚式業界に関わる以上
現状にいつも不満をもって改善して
料金が価値に見合っているかどうかを毎日確認して
努力しなければならない。
結婚式の実施率が下がっているのは
どこか我々業界人の「甘い見立て」「内向きな見立て」
があるからかもしれない。
結婚式の実施率の低下は
お客様からの
「結婚式場を運営する人はもっと考え方を改めて!」
というメッセージだと思っている。
過去の延長線上からくる「改善」というレベルではなく
「生まれ変わる」気持ちで業界に携わらなければならない。
自戒の念をもってここに記しました。
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