2020年04月28日

ISO感度とf値

開放&高感度

最近、プロのカメラマンでも不必要に高感度&開放値で撮影している人を見かけます。残念ながら、写真になっていないことがあります。
 

機材に翻弄(ほんろう)さている

理由は、機材がどんどん変わっていくなかで、ポートレート撮影には向かない設定で撮影を重ね、撮り手のカメラマンの目が翻弄されているからかな?とも思います。翻弄されないために、しっかりと測光してから撮影するわけだが、目の狂いは感覚の狂いを招くので、測光しても値通りに撮影しない感覚になっている人もいます。
 

原因は「一眼カメラが動画向け&アマチュア向けになってきている」から

そもそも現在の一眼カメラは、静止画と動画のハイブリット撮影を前提にしています。しかも、メーカーは需要が高まっている動画寄りの機能拡充をしています。富士フィルムなどを除いて。
 
youtuberをはじめとするアマチュア動画クリエイターは「ワンオペ撮影」です。一人で撮影して、しゃべって… ですからロケに出たときにいちいちライティングをしたりカメラ設定を変えたりできません。そんな彼らにとって「全自動で!」「より明るく!」は重要なファクターなので、メーカーサイドも静止画(特にポートレート撮影)ではまず使わないような高感度やf値を、動画のために設定している面もあります。それをポートレートカメラマンが「使えるんだ」勘違いして使っているような気がします。
 
また、カメラもプロユースとアマチュアユースがボーダレスになってしまっています。圧倒的にマーケットが大きいアマチュアさんが「後ろがぼけてる!」「ふわっとしてかわいい感じ!」と楽しめるようにしたほうがカメラが売れるので、メーカーとしてもそのニーズに寄せます。しかも、アマチュアがカメラを買うときは「画素数が多いか」「感度の拡張域が広いか」など数字的基準で選ぶ傾向があるので、使いもしないような高感度でも設定して高スペック化し、買ってもうおうというのがメーカーの悲しい現実なのだと思う。私には「無用な低f値のチキンレース」のように見えて仕方がありません。
 

動画の1秒は静止画60枚

ざっくり言うと、通常の動画は1秒間に30枚または60枚の静止画を連続撮影して作られています。動画ではあまり気にならないレベルの下手な画作りでも、それを1/60で1枚ずつ切り出された静止画は見られたものではありません。また、動画は最終的にはパソコンやスマホで見るので、1080あればそこそこ大丈夫。しかし、我々プロのカメラマンはその何倍も大きな出力をすることを忘れてはなりません。
 

もっと言えば動画の世界も、時代は高感度ではない

前述のとおり、「より明るく!」というニーズが高い動画寄りに機能拡張されている一眼レフですが、最近では、画作りにこだわる映像クリエイターは、高感度やハイキーな映像は撮影しない傾向になります。シネマティックってやつですね。よりグっとくる映像を求めはじめ、「明るければいい」という考えを卒業している人が増えています。
 

開放で撮ること自体は悪くはないが「消費型写真」になる

絞りが甘い写真のすべてがダメだとは思っていません。ふわっとした写真もあっていいでしょう(適正露出の範囲内なら)。ただ、それはスパイスみたいなもので、何枚かある写真の中に1~2枚ある感じがいいのではないでしょうか。こういう「ふんいきの写真」は「消費型写真」です。雑誌の表紙みたいなものです。時代と共に消費されて古く感じてしまいます。
 
一方、私たち写真館が撮る写真は「価値積み上げ型写真」です。何十年先にまで残るうえ、年月の経過とともに価値が深まる写真です。雑誌の表紙やスマホの中に保存された日常の写真とは違います。そしてベーシックな写真は時代を乗り越えられます。流行のスタイルで撮った写真は色褪せるので、アルバムの中に忍ばせたスパイス的1枚に留めるほうが、お客様にとってもプロに頼んだ甲斐があるというものです。
 

プロに必須な「安定性」「再現性」を担保するために「適正」という軸足がほしい

プロはいろんな状況下で撮影しないといけません。環境光や背景との距離。ポートレートなら被写体の体格や衣裳の色合い・素材。都度、カメラの設定を変えて雰囲気に合った撮影方法をしないといけません。状況や被写体など撮影条件がバラつく中で、仕上がりにバラつきを出さない「安定性」がプロの仕事です。
 
例えば、行くたびに味のバラつきが大きい飲食店があるとしたら、それはプロの店と言えるのでしょうか?お客様にとって味はもちろん安定感は、信用の大きなファクターなのだと思います。カメラマンでも同じだと思います。
 
また、プロだったら、同じ写真を何度も撮れないといけません。再現性ですね。「ほとんどボツだが1000枚に1枚、奇跡の1枚が撮れる。」ではダメなんです。その奇跡の1枚を、何度も撮れる「再現性」がプロなんです。
 
「安定性」「再現性」に必要なのは、うまくいったときのカメラ設定を正確に把握・評価できることです。そのためには、まず基礎である適正な設定ができる技術が必要です。それを軸足にして、どの方面に写真の出来栄えをずらしていくのか?という引き出しを広げていって撮影バリエーションを増やせばいいと思います。
 
歌舞伎の世界でよく言われる「型のある人が型を破ることを『型破り』といい、型のない人が型を破ることを『型なし』という」言葉は、我々技術者にとって共通する要素だと思います。
 
言うが易しで偉そうなことを書きましたが、技術者ならだれでも迷う時期があります。そういうときこそ、基本に戻って「現在地確認」をすればよいと思います。