偏見や差別が生まれる原因とウェディング業界
<ブライダル業界を私的に考察する⑦>
偏見が生まれる理由
偏見や差別の根源は「知らない」から始ることが多い。
偏見という言葉の中に「本当はよく知らない事柄に対して思い込みを持つ」という意味合いが含まれていますよね。
よく知りもしないで他人の意見に流されて、特定の人や事柄に対して苦手意識や嫌悪感を持つことほど、無意味なことはない。そもそも、その他人は実はよく知らない「しったかぶり」の情報を、あなたに伝えて偏見を植え付けているだけのこともある。
そうした無意味な感情を持たないためには「知る」ことが必要だ。勇気を出して相手を知る、現象を知る。その上で抱いた感情なら、それは偏見ではなく意見。意見をどのように持つかは各人の自由なので問題ない。
最悪のスパイラル
生まれた偏見が拡大するスキームは
①偏見を持つ
②偏見を持たれたほうがさらに相手との距離をとる
③距離が遠のいたから知る機会が減る
④より偏見が深まる
⑤「②」へ戻り繰り返す
ということではないでしょうか?
結婚式も同じなのでは?
そう考えると結婚式も同じなのかなぁと思うことがある。
結婚式の実施率は年々低下している。原因はひとつではない。でも、ちゃんと結婚式を挙げるかどうか、色々調べて深く検討した結果、実施しなかった人だけでなく、「どうせ○○なんでしょ?」というような、偏見を脱しないレベルで実施しなかった人も多いのではないでしょうか。
偏見を生んだのは我々自身
こういう状況にしたのは私たちウェディング業界に従事する人間だと思う。極端な全体主義・同質化を進めて、どこも同じような結婚式場ばかりにすることで、リスク回避をした結果こうなった。挙式実施者が減る一方、広告費はどんどん増えるので、お客様から得なければならない売上もどんどん上がり、挙式+披露宴の平均が350万円を越えることになった。業界全体や未来を見ず、現状の利益を効率的に得ることばかりを追った結果、ブライダル業界は「都市部での定番結婚式を望み、350万円の費用が捻出できる人のための、限られた方向けの業界」という先入観・偏見を持たれつつある。
問題は他にもある。非実施層へのアプローチだ。業界関係者は非実施の原因が「高額な料金」だと分析・理解しているにもかかわらず、低料金の結婚式に「うまみ」を感じないため、積極的なアクションをしなかった。結果、非実施層に結婚式のすばらしさを知ってもらえる機会がどんどん減り、「どうせ結婚式場ってお金がないとできないんでしょ」という偏見が形成されてしまった。さらに、非実施層の中には料金的な問題というより「やりたい式場がない(どこも同じで)」というのもある。バリエーションが乏しいため、よくあるタイプの結婚式場にハマらないカップルには、結婚式は魅力的に映らず、お金がないわけではないが「高額な費用を払う価値は見出せない」と思われてしまう。にもかかわらず、あいかわらずブライダル業界の同質化・高費用化が進み、非実施層に対して結婚式を知ってもらえる機会がさらに減って、偏見が深刻化し、さらに実施率が下がるためブライダル業界はリスク回避で同質化・高費用化をすすめ・・・という最悪のスパイラルに突入していると思う。
我が社が取り組んでいること
弊社は、2年前から「結婚式に触れてもらう機会」を増やすために、事業転換してきました。敷地内にカフェを作り、会場に触れてもらう。とことん無駄を省いたり、不透明だった料金を透明化するなど、いわば結婚式場の「既得権」も放棄して、率直にお客様に向き合ってきたつもりです。プリミティブウェディングを推し進めていることが具体例です。
ただ、それに賛同してくれる業界の方は・・・少ないかな(笑)お客様が減っているのに、小さくなったマーケットで、どうやったら競合を出し抜けるかばかり考えておられる方が多い。それも民間企業としては大切だし、競争力のひとつだが、それがクローズアップされすぎていることに、違和感がありまくる。
ロングテイルを育むことが大切
WEB用語に「ロングテイル」という言葉がある。
インターネットを用いた物品販売の手法、または概念の1つであり、販売機会の少ない商品でもアイテム数を幅広く取り揃えること、または対象となる顧客の総数を増やすことで、総体としての売上げを大きくするものである。
出典:wikipedia
ある業界を育てるためには、売れ筋のスタイル(メインストリーム)だけを育てるのではなく、少数派のためのスタイル(フリンジストリーム)も維持しなければならない。そうでないと、売れ筋のスタイルも売れなくなるというものだ。
結婚式のメインストリームは、愛知県内で言えば
①名古屋駅近くまたは名古屋市内にある、
②定番な結婚式場の内装・外観・サービス内容で、
③お姫様願望が高い方向けの演出を得意とする会場。
だと思います。これを望むカップルが多いことは理解できますし問題はありません。
問題なのは効率的に利益を得ようとするがあまりに、「そればっかり」になりつつあることです。効率化を進めれば、ブライダル業界の未来は明るいのでしょうか?
○名古屋市内ではなく地元でやりたい
○料金的・演出的に個性があふれる結婚式を挙げたい
○目立つのは苦手だけど「けじめ」として結婚式を挙げなきゃ(地味・シンプル)
というカップルが挙式できる場がどんどんなくなってませんか?こうしたロングテイル層のお客様を激減させた業界は、衰退すると思うんです。
私は、初動段階の結婚式場探しをするカップルは、まだ自分たちが「メインストリーム」なのか「フリンジストリーム」なのか、明確でないまま、ある種の思い込みで会場探しをしていると思う。結婚式を「買う」ことが初めての方が圧倒的に多いのだから当たり前だ。
しかし、会場研究を続けるにつれ、自分をメインだと思っていた方が、実はフリンジであったことに気づいたり、その逆だったりすることもある。結婚式のあり方や、自分たちの希望に対する「偏見」が晴れ、「意見」を形成してくれる。
であれば、間口は広いほうがいい。メイン向けであれ、フリンジ向けであれ、豊かなラインナップの中から、まずは結婚式場に触れてもらって、本当に自分たちが希望するスタイルを見つける。お客様の満足度も上がるし、業界全体に対する相乗効果は計り知れない。
そもそも広告に踊っている「豊富な会場ラインナップ!」「オリジナルウェディング!」という標語も、ハリボテ、見せ掛けであるとお客様に思われてしまっている。個性豊かな式場や地方立地の会場がどんどん閉業に追い込まれ、都市部の万人受け式場が残っているような状況だから、そう思われても仕方がない。実質的に豊かなラインナップと、そこから生まれるオリジナリティを復活させないといけないのだ。
ブライダル会場運営会社、ブライダルの広告会社、技術系も含めたブライダル関連ヴェンダー企業、全員で、このロングテイルの再構築をしませんか?幅広い方に、ブライダルを知ってもらって、偏見をなくし、ロングテイルを育てて、定番から個性派までそろう、豊かな業界にしましょうよ。
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